弁護士コラム
【弁護士コラム】相続相談に必要な持ち物(初回相談をスムーズにするコツ)

こんにちは。
相模原の弁護士の多湖です。
相続のことで弁護士に相談したいけれども、何を持っていけばいいのか分からない。
弁護士に相談するというのは、人生でそう何回もあることではないので不安ですよね。
今日は、弁護士に相談する際に、スムーズに相談するコツを弁護士の視点から解説をします。
親族関係を記したメモ(親族関係図)
弁護士が相談を受けた際に、最初に把握したいのが、
(1) 被相続人(亡くなった)は誰なのか、
(2) 亡くなったのはいつか、
(3)その相続人と考えられる人は誰か
という点です。
相続は、亡くなった人ごとに分けて考える必要があり、誰について発生した相続かをまず把握する必要があります。両親共に遺産分割未了だとしても、父親と母親ごとにどのような相続関係になるか、分けて考えていく必要があります。
次が、誰が相続人になるかです。
相続人が何名いるか、それが子なのか兄弟なのか、配偶者なのかなどで相続の割合に関わってきますし、相続人が誰かという問題は、遺言がある場合でも遺留分の割合に関係します。
例えば、遺言がない遺産分割の事案で、父親の相続で配偶者は父親より先に他界、子どもが二人だと思い、弁護士が「遺言がないので法定相続分は2分の1ずつです。」と回答をした場合、実は、父親が過去に離婚した配偶者との間に子どもが一人いた場合、法定相続分は3分の1になり、結果が大きく変わってしまいます。
他にも戸籍を見てみたら、いつのまにか甥っ子や姪っ子が「養子」に入っていたということがあります。
特に結婚と離婚を繰り返している方がいる場合は、注意する必要があります。
そのため、相続人が誰かが分かるように、戸籍なども事前に取っておくほうが望ましいのですが、戸籍を取るのも大変ですから、戸籍を取得するのが難しい場合でも、基本的な相続人の情報については、ある程度事前にメモにまとめておいた方がスムーズにいきます。
弁護士に依頼をすれば、弁護士が相続人を調査しますが、私の経験でも相続人を一人失念した弁護士が、遺産分割協議を成立させたにも関わらず無効とされていたケースを見たことがあります。
遺産分割協議は、一人でも相続人を欠くと無効になりますから注意が必要です。
遺産目録(遺産をまとめたメモ)
次に欲しい情報が、おおよその遺産の状況です。
不動産などは査定を取得している方も多いですが、最低限固定資産評価額などが分かれば、目途がつきます。
既に相続税申告が済んでいる方は、申告書を必ず持っていきましょう。遺産が一覧でまとめられており、それぞれの価額も載っていますから、話がかなりスムーズになります。
問題は、特に預貯金など遺産の内容がほとんどわからない場合です。不動産は調べる方法がいくらでもありますが、預貯金は銀行の目途が分からないと調べるのが難しく、少し厄介です。
また、借金も遺産から引かれますから必要です。
例えば、地主の方など、ローンを組んで建物を建てていたりしますので、実際にはプラスの財産とマイナスの財産を差し引きすると、遺産額は大きくないということもあり得ます。
弁護士が相続を受任できるかどうかを判断する場合、「受任をしてみたものの遺産は全くありませんでした。」となると、着手金分の損害を与えてしまいますから、受任をすることが適当かどうかを判断する場合に、ある程度、遺産の目途だけでもつけるようにしています。
遺産の金額は、
(1)財産を管理していた方におおよその金額だけでも教えてもらう、
(2) 実家で通帳を探してみる、
(3) 両親から聞いていた銀行に相続人として残高証明書等を発行してもらう(基本的には被相続人の除籍謄本と、相続人であることがわかる戸籍があればいいので難しくはなく、郵送で出来るところも多いです)
などが考えられます。
遺産の種類や金額を箇条書きなどにして、弁護士に見せると良いでしょう。
被相続人が他界した後で、遺言が残っている場合は、他の相続人が見せてくれなくても、公正証書は公証役場で、自筆証書遺言で法務局に預けている場合は法務局で検索できますから、試してみるとよいです。
<参照>
日本公証人連合会:公証事務
Q1. 亡くなった方について、公正証書遺言が作成されているかどうかを調べることができますか?
https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02/2-q23
自筆証書遺言書保管制度
04 相続人等の手続
https://www.moj.go.jp/MINJI/04.html
仮に自筆証書遺言が法務局に預けられておらず、自宅などで保管されている場合であっても、その遺言を使用して不動産の登記名義を変更したり、預金口座の解約をするには家庭裁判所で遺言の検認を経る必要があります。
家庭裁判所からは相続人宛てに検認日の通知が行きますから、その際に自筆証書遺言を確認することも可能です。
遺言がある場合には、遺言書も持って弁護士に相談をしましょう。
時系列のメモ
被相続人が亡くなる前の通院歴、居住場所、介護状況、生前贈与の有無、死亡から現在の他の相続人との交渉経緯など、時系列ごとにまとめておくと、話の内容が分かりやすいです。
時系列のメモは、【年、月、日】【場所】【出来事】などいわゆる英語の5W1Hがはっきりしていると分かりやすいです。
質問事項
ある程度相続について調べていらっしゃる場合は、質問から入ることもあり得ますので、上記の相続の基本情報と質問事項をまとめて頂くと、弁護士からの追加の事情聴取は最低限で済み、回答から入ることが出来るのでスムーズです。
相談時のコツ
1. 事実と推測を分ける
事実と推測は分けて整理する必要があります。
例えば「父が兄に500万円を生前贈与しました。」という発言があったとします。
この言葉だけをみれば、普通は客観的事実としてそのようなことがあったのだと受け止めるのが一般的です。
しかし、「何か証拠がありますか?」と尋ねると、「証拠はないです。父が兄にお金を渡すと言っていたことを聞いたことがあり、その時にトヨタのクラウンを兄が買っていたので、その代金が500万円くらいだとネットに書いてあったので、その金額をもらっていたに違いありません。何故なら兄はそのような大金を出せるわけがありませんから。」といった会話につながることがあります。
「●●に違いない。」とご自身が思っていることを「●●がありました。」と断定してしまうことはよくあります。
この点、弁護士は専門家ですから、事実と推測とを切り分けて会話が出来るように整理をしていきますが、経験が不足している弁護士であったり、ベテランであっても人間ですから誤解が生じることがあります。
そのため、自分が目と耳で経験した事実と、「推測」とを分けて説明すると、より正確性の高い相談結果を得ることが出来ます。
2. 不利になりそうな情報も隠さない
弁護士は、相談者の方や依頼者の方からもたらされた情報を基に方針や見通しを立てます。
例えば、あとになって「実は父の預金口座から5000万円を引き出していました。」「自宅を買うときに3000万円を払ってもらいました。」という事実が発覚すると、事件の見通しや必要な手続きが大幅に変わり、ご本人にとって大きな不利益をもたらすことがあります。
弁護士が正確な見通しを立てるためには、不利な事実についても事前に伝えておく必要がありますし、事前に伝えておきさえすれば、それを前提に防衛策を考えることが可能な場合もあります。
そのため、早い段階で不利な事実について伝えておくことが非常に重要です。
3. 分からないことを分からないと伝える
弁護士は、日常的に専門的な用語を使っているため、一般的な言葉と、専門的な言葉の区別があいまいになっていることがあります。
出来る限り、分かりやすいように説明をしているつもりでも、自分の頭の中で当然の前提となっていると、ついつい専門用語を前提に説明をしてしまうことがあります。
そのため、弁護士の説明で分からないところがあった場合には、分からないと伝え、しっかり理解ができるまで説明を聞いた方が良いです。
法律相談の際に、分からないところを聞いたら曖昧にされたり、不機嫌になったりされた場合、依頼をした後も必ず同じことがあります。
自分の疑問にしっかりと答えてもらえるかその時の回答内容をしっかりと見極める必要があります。
相続の相談のQ&A
Q1 他の相続人と揉めていなくても相談をしていいですか。
もちろんです。
相続の問題が生じる最大の理由は、最初の交渉の際のトラブルにあります。
例えば、私が過去に相談をした案件でも、遺産の使い込みをした方が遺産を開示したくないと希望を持っていましたが、いずれ調べられてしまうので、正直に説明をして謝罪をした方がいいというご助言をし、結果的に他の相続人の方がこれまでの貢献を考え、大きく譲歩をしてくれたということがありました。
やはり、不安なところがある場合や、揉めそうな気配がある場合、揉める前に相談をするのが肝心です。
Q2 戸籍や財産目録がありません。
戸籍や財産目録がなくてもご相談自体は可能です。
資料がない場合は、推測も交えることにはなりますが、一般論を含め大枠のご説明は可能です。
Q3 相談をしたらすぐに依頼をしないといけませんか。
相談をしても依頼を勧誘することはありません。
また、相続のご相談の場合は、複数回相談をされてから依頼をされることが多いです。
弁護士への依頼はそれなりの費用が発生しますからあとで後悔をしないように、一度持ち帰ってから依頼をするかどうかを判断されるという流れをお勧めしています。
まとめ
相続の手続きや話し合いは、時間が経つほど複雑化してしまうことがあります。
「何から手をつければいいかわからない」「資料が揃っていない」という段階であっても、お一人で悩まずに、まずは一度弁護士にご相談ください。
以 上
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