弁護士コラム
【弁護士コラム】遺産の使い込みや無断引出は、いつまでに弁護士に相談すべきか

こんにちは。
相模原の弁護士の多湖です。
今日は、相続(遺産分割、遺留分侵害額請求)に際して、預金の無断での引き出しや、遺産の使い込みが発覚した場合、いつ頃までに弁護士に相談すべきかです。
遺産の使い込み、無断引出しが発覚した場合、すぐに弁護士に相談すべき
結論から述べると、遺産の使い込み、無断引出しが発覚した場合は、すぐに弁護士に相談をすべきです。
依頼をするべきかはさておき、すぐに今後の対応について相談をする必要があります。
相談を急いだほうがいい理由
1)消滅時効の問題
遺産の使い込みや無断引出しは、「遺産分割」手続きでは解決できず、民事事件の「不当利得返還請求」になります
遺産分割も所々の理由で早く行った方がいいのですが、一応、遺産分割自体には消滅時効はありません。
しかしながら、不当利得返還請求は、「預金口座からの引出し時点」を始期として時効がスタートすることが大半で、過払いの返還請求などと異なり、「最後の引出時」からではなく、一つ一つの引出行為を独立したものとして時効を計算するのが基本です。
改正後の民法166条は
「権利を行使することができることを知った時から5年間」あるいは、「権利を行使することができるときから10年間」と定めています。
預金の引出しでは、この5年は、財産を管理している相続人から具体的に〇〇円引き出したなどと聞いたとき、あるいは取引履歴の取り寄せなどで無断引出しや使い込みについて知った時です。
自分から使い込みを明らかにする人は稀ですから、実務上は後者が大半です。
次に10年の時効は、「その相続人の引出時からスタート」します。
他の相続人が引出しの事実を知らなくてもスタートします。
財産の管理期間が長く、かつ遺産分割自体をすぐに行わなかった場合、古い引出しについて消滅時効にかかり始め、請求する頃にはかなり請求できる金額が減ってしまうということがあります。
弁護士でも誤解をされている方がいますが、遺産分割の話や調停を進めていても、それ自体では消滅時効のカウントは止まらないので注意が必要です。
私の経験上も「弁護士に遺産分割調停でも遺産の使い込みが請求できると聞いたから、それが終わってから時効がスタートするのではないのか。」「弁護士はきちんと説明してくれなかった。」とお聞きしたこともあります。
遺産分割と遺産の使い込みは別の問題であるため、弁護士は相談者の方が「遺産の使い込みを相談したい。」とおっしゃらないと、法律相談でも遺産分割のみのご案内のみするのが一般的ですから、明示的に述べた方がいいです。
そのため、引出しや使い込みの事実を知った時には、早めに弁護士に相談をすることが重要です。
2)資料の収集が出来なくなる
昔は15年や20年くらい取引履歴を開示してくれる金融機関が多かったですが、最近の金融機関はシビアです。
特にネットバンクは、最低限しか開示に応じないことも多く、古いものは入手できないことも多々あります。
使い込みや引出しがいつから行われているのかは、推測は出来ても、本当に行われているかは取引履歴を見ないと分かりません。
私の経験上も「20年前に遺産分割があって、その時はそれでいいと思ったけれど、預金が4000万円はあったはずで、それを告げられていないからそれを遺産分割したい」とか「使い込みとして不当利得を請求したい。」というお話をお聞きすることがあります。
10年、20年前の不当利得を追及することは困難で、おかしいと思ったらすぐに請求する必要があります。
3)遺産分割協議書にサインをする前に、必ず相談をすること
遺産分割協議書に署名押印をしてから、「結果に納得できないから不当利得の返還請求したい。」という希望をおっしゃる方もいます。
しかしながら、遺産分割協議書には、清算条項を入れることが基本です。
そのため不当利得返還請求は、原則的に行うことは困難です。
また、使い込みをしてしまう方は、手元に財産が残っていない方も多く、遺産分割が未了であれば財産の分け方で調整できるものの、何年も前に終了してしまっていると、回収が困難になるケースも多いです。
私も遺産分割が過去に終了しているケースで、あとで不当利得返還請求だけを依頼されたいというご要望は、資料収集の困難さや回収可能性の観点からお断りすることが多いです。
やはり使い込みについておかしいと思ったら、自分だけで解決しようとせずに、すぐに弁護士に相談をする必要があります。
以 上
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