弁護士コラム
【弁護士コラム】相続人の一人が「遺産を独占している場合」の情報の集め方

相模原の弁護士の多湖です。
被相続人が亡くなり、相続が開始した際に一番困るのが「遺産として何があるか分からない。」という問題です。
これは、我々弁護士が遺産分割などのサポートに入る、大きなきっかけの一つでもあります。
遺産として何があるか分からない、という問題
遺産について遺言が残っている場合は、遺産の目録が作成されていたり、遺産の多くが遺言書自体に記載されていることも多いため、それらを手掛かりにすることが出来ます。
問題は、遺言書もなく財産の情報に乏しい場合、あるいは一部の相続人に「全ての財産を相続させる。」といういわゆる全部相続で遺留分侵害額請求を行いたい場合です。
本来であれば相続人同士で協力して遺産に関する資料を集めるのですが、近くで財産管理をしていた相続人が遺産の情報を囲い込んでしまい、他の相続人へ開示をしないということが良くあります。その場合、他の相続人としては、遺産の情報が分からず、相続手続きをどのように進めればいいのか悩むことになります。
今日はその際の進め方を説明します。
相続人の一人が「遺産を独占している場合」の情報の集め方
1)弁護士を選任して任意開示を求める
遺産の情報が分からない場合、弁護士を選任して、遺産の情報の任意開示を求めることがあります。
但し、弁護士からの請求だと開示に応じる方もいますが、断固として開示をしないと決めている方だと弁護士でも開示に応じてもらうことは困難です。法的な強制力がないからです。
2)資料の取り寄せ
不動産については、隠すことが難しいため、役場の名寄帳(人名で不動産の一覧を管理しているもの)や法務局での氏名での検索(但し未登記建物は出来ない。)を行って調査が可能です。
問題は預金などの金融資産ですが、金融機関のおおよその目途さえ分かっていれば、戸籍等を提示し、相続人としての取引履歴の取寄せ等を行うか、弁護士会照会などの手続きを利用することも出来ます。
ただ、弁護士会照会は金融機関が拒否する場合もありますので、相続人本人の地位として、あるいは相続人の代理人の地位で、開示請求を金融機関に対して行うのが一般的です。
不当利得が疑われる場合も、過去の取引履歴に遡って取得します。
ただ、10年以上前は遡れないことが多いです。
取引履歴には、生命保険料の支払や、他の銀行への振り込み、証券口座への支払いなど、財産の情報が多く載っています。
3)遺産分割調停、遺留分侵害額調停
遺産が全く分からず、その情報の収集も困難である場合は、分かっている遺産のみ遺産目録に記載し、その他は「不明」として、遺産分割調停あるいは遺留分侵害額調停の申立てを行います。
自分で進める場合も弁護士を選任する場合も、話し合いが出来ない場合は調停の申立てを行うべきであるのは同じです。
遺産分割調停や遺留分侵害額調停の申立てをすると、裁判所の方から財産管理をしていた相続人に対して、遺産の情報を提出するように求めがあります。
また、裁判所に申立てをして行う「調査嘱託」という手続きも可能となりますから、自分あるいは弁護士会照会で取得できない情報についても、調査嘱託で答えてもらえることがあります。
4)税務申告書等を見る
昨今は、控除額の引き下げにより、遺産分割が必要となる案件の多くは、相続税の申告も必要になります。
税理士が作成した相続税申告書を見れば、相続財産の一覧がありますから、そちらを参照するのが早いし確実です(脱税にならないように慎重を期していますから)。
また、相続税の申告書は共同での申告が原則のため、基本的に共同相続人に税理士から署名を求めます。その際に写しの交付などを受ければ、相続財産を把握することも可能です。
まとめ
遺言書がない場合、不動産の登記をしたり、遺産の解約や整理を行う場合、他の共同相続人との遺産分割の協議書が必要になります。
「遺産の情報を開示しない」という対応をしてしまうと、かえって他の相続人の不信を招いたり、相続手続きが揉めて泥沼化することがありますから、注意が必要です。
以 上
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