弁護士コラム
【弁護士コラム】遺産の使い込みの発覚時の対処方法

こんにちは。相模原の弁護士の多湖です。
今日は、相続(遺産分割、遺留分侵害額請求)に際して、被相続人が認めていない、無断での遺産の使い込みが発覚した場合の対処方法を説明します。
被相続人が認めていない、無断での遺産の使い込み
被相続人の方の預貯金等について、生前、被相続人の通帳等を管理している人物が私用(旅行代、教育費、生活費等)のために、使い込みをするということは多々あります。
遺言がない場合は、相続人間で遺産分割が必要になりますから、遺産分割と並行して、使い込み部分については、不当利得返還請求という請求をします。
遺言がある場合、遺留分侵害額請求を行使できる場合がありますが、この場合も遺留分侵害額請求と、不当利得返還請求は別の権利ですから、やはり別々に行使するのが原則です。
この二つは同じ遺産に関する問題ですが、手続きは全く異なるのです。
遺産の使い込みが発覚した場合の注意点
遺産の使い込みが発覚した場合は、遺産分割協議書などにご自身の判断で、署名押印をしたり、遺留分相当額として先にお金を受けってしまうのは絶対にやめた方が良いです。
私の経験上、遺産の使い込みがあるのではないかと疑っているにも関わらず、きちんと調査をせずに、他の相続人から言われるがままに、遺産分割協議書に署名押印をしてしまい、包括的な清算条項が定められていたがために、もう何も出来なくなるという事態が多くあります。
生前、死後に、遺産の使い込みを指摘していたにも関わらず、一度、包括的な清算条項を定めてしまえば、もう弁護士でも手の施しようがありません。
遺留分相当額のお金を受け取ってしまったりする場合も同じで、例えばLINE等で、遺産の使い込みに触れて話し合いをして金額を定めた場合、「遺産の使い込みを含めて、不当利得関係も全て解決済みだ」と主張されてしまうこともあります。
遺産の使い込みがある場合には、「期限があるから急いで。」と言われても、署名押印をする前に、一度、弁護士に相談するのが何より肝心です。
遺産の使い込みと、遺産分割手続(調停、審判)との関係
(1) 遺産分割と不当利得の住み分け
遺産分割は家庭裁判所が管轄し、地方裁判所では審理が出来ません。
一方で、使い込みについての不当利得返還請求は、地方裁判所の管轄で、家庭裁判所では審理対象外です。
もっとも、裁判所外での交渉段階はもちろん、審判に移行する前の遺産分割調停の段階では、法的な制約に必ずしも縛られないので、解決までの期間の短縮ために、双方が合意すれば、話し合いの俎上にのせることは可能です。
ただ、私の経験上、遺産の使い込みの有無や、使い込みの金額について、自ら「自分がやりました。」と認める方はほとんどいません。
そのため、遅かれ早かれ、地方裁判所での不当利得返還請求が必要になるため、遺産分割調停での話し合いを打ち切ることとなることも多いのです。
なお、面倒なことに、遺産分割調停や審判は、現実に今も残っている遺産の分割しかできず、「分割対象となる遺産の範囲」を双方が合意できる場合にしか、手続きを進められない取り扱いになっています。
そのため、遺産の使い込みなどがある場合は、「事前に地方裁判所で、遺産の範囲の確認の訴えや、不当利得返還請求を行ってから、家庭裁判所の遺産分割調停に戻って来て下さい」と言われてしまい、結局調停を取り下げることになり、時間が余計にかかってしまうことがままあります。
そのため、遺産の使い込みがあり、その金額が多額である場合などは、地方裁判所での不当利得返還請求を先行させ、その結論を待ってから遺産分割をした方がよいという結論になります。
(2) 不当利得がある場合の遺産分割手続きに必要な期間と相続税申告期限
相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月)もありますし、相続税を大幅に減らすことが出来る小規模宅地の特例の期限などもありますから(相続税の申告期限から3年)、正直、迷っている時間はあまりなく、すぐに弁護士を依頼して動き出さないと間に合わないです。
不当利得の審理だけで、高裁、最高裁も含めると2~3年かかることもよくあるからです。
遺産の使い込みと、遺留分侵害額請求との関係
(1) 遺留分侵害額請求と不当利得の住み分け
次に遺産の使い込みがある場合の遺留分侵害額請求についてです。
相続では遺言は極めて強い効力があり、遺言が有効である場合は、遺産の処分は遺言に従って処理されます。
唯一、相続人に許されている権利は、その遺言に従った処分が遺留分侵害額請求の対象となり得るかどうかです。
遺産の使い込みについては、遺産分割とは別の不当利得返還請求権として整理されます。
(2) 遺産の使い込みを遺留分内で処理できることが多いこと
ただ、遺産分割の場合と比較して、遺留分侵害額請求の中で解決できることも多いです。
方法としては、使い込み相当額を遺産に存在すると仮定して、遺留分の計算をします。
例えば、1億円の遺産があった場合に、生前に4000万円を使い込んでいた場合、1億4000万円を前提に遺留分を計算し、交渉や調停段階で合意する形も多いです。
遺産分割と異なり、遺留分はどちらにせよ全額金銭に換算されること、遺留分が発生する場合は、すなわち他の相続人が遺産の大半を相続している場合が多いため、法定相続分で分割することが多い遺産分割と異なり、請求される側の資力に余裕がある場合も多く、最終的に不当利得を正面から認めなくても、事実上一定の金額を「解決金」として処理することの心理的抵抗感が少ないためです。
(3) 訴訟での解決
また、家庭裁判所での審理しか出来ない遺産分割と異なり、遺留分侵害額請求と不当利得返還請求はいずれも地方裁判所での管轄ですから、裁判所が併合して審理することも可能ですから、それらも全て含めた一括した解決が有り得ます。
その点、地方裁判所から家庭裁判所に移って順番に行わないといけない、遺産分割の場合よりは、解決が早くなるわけです。
不当利得の消滅時効
不当利得返還請求は、消滅時効が定められおり、権利行使が出来ることを知った日から5年(使い込みがあることを知った日から)、権利が行使できる日から10年です(預金の引出等の日から)。
生前から使い込みを知っていた場合、相続開始時には消滅時効が近いことが多いですから気を付ける必要があります。
また、預金を日々引き出していた場合、10年前の引出しがあると、日々請求できる金額が消えていくことになりますから、こちらも注意が必要です。
私の経験上も、相手が身内ということでなかなか言い出せずに、年月が過ぎてしまったが、その後の相手の不義理等を理由に、やっぱり請求したいと考えたにも関わらず、弁護士に相談した時には既に消滅時効が完成していたというケースもあります。
消滅時効には常に注意を払う必要があります。
他にも、消滅時効以外にも、銀行の預金の履歴は、生きている口座で10年程度までしか遡れないことも多く、生前の分も請求したい場合は、速やかな対応が必要です。
以 上
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