弁護士コラム
ホスト売掛金禁止条例
みなさんこんにちは。
神奈川県相模原市の弁護士の多湖です。
先日ニュースを見ていたら、東京都新宿区での「ホストクラブの売掛金禁止条例」について議論されていました。
外国人技能実習生の問題もそうですが、かなり前から問題が起き、我々弁護士としては重大な社会問題と捉えて、動いていても(技能実習生は日弁連が声明まで出していました。)社会的には無風で、かなりの期間が経過してから、マスコミが報じ始めるということが多いですね。
ホストクラブの売掛金問題
さて、このホストの売掛金問題というのは、かなり難しく根深い問題です。
私も過去に「暴利行為による公序良俗違反」で戦い勝訴したことがありますが(消費者契約法のデート商法の改正前)、当時、基本的に裁判所は、「契約自由の原則」を掲げて、あまり見向きもしてくれませんでした。
現に私に相談に来る前にも、その方は何人もの弁護士に「勝ち目がない。」と断られた状態でした。
「実際にその金額だと分かっていて、飲み食いをしたのでしょう?
ドンペリだと知らずに注文をしたのですか?知っていたでしょ?」
これが裁判所のロジックでした。
ホストクラブの運営会社側も、法律をきっちり勉強していて、浪費によって自己破産等が難しい(最も若年者であれば、裁量免責を試してみる価値はある)ことを知っているので、強気に裁判までしてきたわけです。
私も受任する覚悟を決める際に、裁判と破産の二段構えで臨みましたが、相談した弁護士たちからは「難しいんじゃないか、法的な理論を構成できるのか」と止められました。
警察や弁護士に相談に行っても、
「成人が自らの意思でやっていることなので、売掛というシステムは抑えがきかない。600万~800万円という被害金額を親が負担し、“なんとか娘を抜け出せないか”という相談を受けるようになった」
💻 https://news.yahoo.co.jp/articles/3e7b0169cb6918ca5eee42c59d03621c016
df25c
「ホスト沼で高額ツケ払い“売掛禁止条例”提案も
「酔わされ150万、250万」歌舞伎町“駆け込み寺”理事が知るリアルとは?」
まさにこのような状態ですよね。
警察は「民事不介入」、弁護士は「裁判で勝てない」を理由に、そういう相談を全く相手にしなかったのは事実です。
当時、私が思っていたことは、
貸金には総量規制(収入の何割しか貸し付けが出来ない)があるのに、売掛金も実態は貸金と変わらないのに、少し形を変えれば、規制を逃れられるのは納得のいかない話だ
ということです。(ファクタリング会社に利息制限法が適用されないことも、同じく疑問を持っていました。)
制定法の国ではある程度仕方ないのですが、規制されている分野で生じている理不尽を、大幅に上回る理不尽があっても法律がなければ止められないのは、法律家として悔しいものです。
(学生の十代、二十代の子に、数百万円の売掛金が払えないことなんて最初から分かり切ったことで、結局そのあと何がしたいのかは、客観的にも明白ですから)
一方で、売掛金商売自体を規制するというのは、経済活動の自由を憲法が認めている我が国においては、かなり強い制約になります。
特定の店などの狙い撃ち立法は出来ないので、健全な飲食店には影響のない総量規制的な話になるのかなとも思いますが、いずれにせよ立法事実をしっかり分析し、規制態様や方法論について、しっかりと議論してから制定する必要があります。
以上
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