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弁護士コラム

不倫の立証にGPSは使えない?

不倫
【弁護士コラム】不倫の立証にGPSは使えない?

みなさん、こんにちは。
相模原の弁護士の多湖です。


今日は、不倫の立証に「GPSを使用した証拠を使用することが出来るか」についてです。

GPSの利用について

GPSの利用については、年々厳しく制限がかけられています。


最高裁は平成29年3月15日に、GPSを使用した操作は強制処分であり、令状が必要としました。


その上で、GPS捜査について、「個人のプライバシーの侵害を可能とする機器を、その所持品に秘かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反して、その私的領域に侵入する捜査手法である」として、「個人の意思を制圧して、憲法の保障する重要な法的利益を侵害する」ものであると判示しました。

「最高裁判所判例集」事件番号:平成28(あ)442

裁判所 – 裁判例結果詳細
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86600


また、ストーカー規制法が改正され、令和3年8月26日より、GPSの位置情報の取得が違法化されています。

ストーカー規制法が改正されました!
近年、元交際相手等の自動車等にGPS機器をひそかに取り付け、その位置情報を取得する事案がみられるなどの最近におけるストーカー事案の実情を踏まえ、令和3年5月26日にストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律が公布されました。

警察庁 -ストーカー規制法が改正されました!
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/R03kaisei/index.html


そして、令和5年1月、富山県弁護士会は、GPSの使用自体には一切関わっていなかった弁護士が、依頼者がGPSを使用して取得した位置情報の提出をしたことを理由に懲戒処分にしました(但し、その処分の正当性は疑義が呈されています)。


このような社会の流れからいえることは、いくら不倫の事実を立証するためとはいえ、GPSを利用した証拠収集というのは、プライバシー権侵害として違法性が阻却されない可能性があるということです。

他にも相手の敷地に侵入して取り付けた場合の住居侵入罪や、取り付ける時に車などを壊してしまう器物損壊の問題もありますので、一般の方は通販などで売っているGPSを買って自分でつけない方が良いです。(昔は証拠収集に使用される方が多かったですが)


また、弁護士会が懲戒権を行使し、事実上、全国の弁護士の立証活動の手足を縛った以上、GPSを少しでも使用している証拠の提出をすることは、仮に結果として裁判官が違法収集証拠として民事訴訟では排除しない場合(法律上は裁判の証拠として利用できる)であっても、弁護士会の取り決めで弁護士として一切出来なくなったわけです。

それが唯一無二の証拠で、悪質な態様の不貞行為の立証が出来る場合であってもです。

GPSの問題の影響

弁護士の手足を縛ったということは、それらの弁護士に依頼をして裁判をしようとする一般国民の方の手足(日本国憲法で保障される裁判を受ける権利)も同時に縛ったことにもなります。

そして、このGPSの問題の影響はこれに留まりません。


次に実務家が疑問に思うのが、配偶者の携帯電話からLINE履歴を転送したり(LINEアプリにパスワードが掛かっていることが前提です)、写真に撮影して、それを不倫の証拠として提出することが出来るのかです。


まず、LINEアプリのパスワードを無断で外して、証拠化することは「不正アクセス禁止法」違反に当たるとされています。「ラインのネットワーク」に侵入してしまうことが同法に違反する根拠とされています。


携帯電話のパスワードを開けた場合は、不正アクセス禁止法には当たらないものの「プライバシー権侵害」には当たる可能性があります


以前GPSが利用された証拠を、多くの弁護士が提出していたのと同様に、現在でも大半の弁護士がこの携帯電話から転送された証拠や写真で撮影したトーク画面を裁判の証拠として利用しているわけですが、これも、トーク履歴の内容や量によっては、あるいは位置情報を遥かに上回る重大なプライバシー侵害にあたります。(自身の位置情報より、トーク履歴を知られたくないと思う方の方が圧倒的に多いのではないでしょうか)


刑事手続きにおいても、もともとトーク履歴の押収は、刑事手続きでも強制捜査に付随する必要な処分と解されて、条件付きで刑事訴訟法によって合法と解されています。


そのため、刑事関連の法律が想定している人権侵害の程度は、トーク履歴の収集も、GPSによる位置情報の収集と状況は大差ないと考えることも出来ます。


むしろ、GPSはストーカー行為規制法や住居侵入等に当たる場合を除き、必ずしも犯罪に当たらないので、犯罪行為と解されているLINEアプリのパスワード外しや、プライバシー権侵害の程度の高い携帯電話のパスコードを外してのトーク履歴の収集の方が、類型としてその違法性の程度はより高いと考えることも出来るかもしれません。


そうすると、GPSを利用した証拠の収集に仮に弁護士が関わっていなくても、裁判所に提出する行為が懲戒され得る行為に当たるのであれば、次に懲戒され得ると考えられるのは「配偶者に無断で提出したトーク履歴の証拠提出」です。


理論上は王手が掛かったともいえます。


多くの弁護士は業務行為において、自らに振りかかる最大リスクを想定しますから、受取り手である全国の弁護士はそのように解釈するものも出てきます。


というのも、「品位を害する」という懲戒対象行為は、具体的に何をしてはダメかの基準が、刑法と違って明示されていないので、非常に抽象的であり、横領などの一部の悪質なものを除いては、何が実際に懲戒されるか、懲戒に掛けられてみないと本人も周りも誰も確定的に分からないからです。


懲戒委員会の過半数が「自分たちはやらない。違うんじゃないの。」と考えれば、品位を害すると判断されます(例え、7人の委員が問題があると考え、残り6名の委員が全く問題ないと考えてもNGなわけです)。


そのため、自己保身の意識が強い弁護士であれば、今後、「配偶者に無断で収集した」証拠を根拠とした依頼は一切断るようになるでしょう


そういう弁護士が多数派になれば・・、そうすると一般の方がそういったものを利用して裁判をすることは結局難しくなっていくわけです。


やはりこの観点からも今回の弁護士会の決定は、一般国民の方の裁判を受ける権利を広い範囲で縛ることになっていくと評価できます。


さて、あと残っている安全とされる不倫の立証活動は、「当事者に直接認めてもらうこと」か、「GPSを利用せずに探偵を依頼すること」ですが、前者が難しいことは皆さんにもお判りになるはずですし、後者も経済的に厳しい方が多いですからね。


もしかしたら、この国から不貞の裁判自体をなくしていきたいのかな?
そう思ってしまいますよね。


一度、弁護士会には、不貞裁判の今後の展望について、丁寧な解説をお願いしたいところですね。


以 上

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