弁護士コラム
【弁護士コラム】改正民法と離婚前に子どもを連れて別居をする際の注意点

こんにちは。相模原の弁護士の多湖です。
令和8年4月に改正民法により共同親権が施行しました。
これにより、離婚事件については、大きな変化を迎えています。
今日は、離婚前に子どもを連れて別居をする際の注意点をご説明します。
居所指定権と、別居後に子どもはどちらと暮らすか
離婚前は共同親権ですから、双方ともに親権を有しています。
子の居所の決定は、「監護及び教育に関する日常の行為(民王824条の2第2項)」に該当しないため、父母間で協議が整わない場合は、その親権行使者を家庭裁判所が指定することになります。
旧法下での監護者指定も改正後も利用できますが、上記の居所指定に関する親権行使者の指定は、あくまで「居所の指定」のみが対象です。進学先の決定などは、引き続き単独で行使が出来ません。
「家庭の法と裁判58」などでは、別居後にどちらと暮らすかは、この居所の指定の親権行使者の指定が利用されると紹介されていますが、別居時に子がどちらと暮らすかが協議で定められないケースは、かなり激しい対立が予想されますので、基本的には「監護者指定」の申立ての方が良いのではないかと思います。
子がどちらと暮らす方がいいかについては、居所指定の親権行使者の指定であっても、子の監護者の指定であっても、これまでの監護者指定の審判と同様の考慮要素になります。
具体的には、➀従前の監護状況や現在の監護状況、➁父母の監護能力、➂子の年齢や発達状況、➃環境の変化への適応性、⑤父または母との親和性、⑥子の意向や心情、⑦親子交流に関する姿勢、⑧きょうだいに関する事情などが考慮要素とされます。
この中でも特に、従前の主たる監護者がどちらか、現在の監護者がどちらか、監護の状況が非常に重要です。
DVなどがある場合には、別居時に子を連れて出ることが可能
離婚前の共同親権下においても、DVなどの急迫の事情がある場合には単独行使として、子を連れて別居することは可能とされています。
しかし、筆者の経験では、他方親が誘拐を主張して、警察の強行犯係が事情聴取に避難先へ訪れたり、子どもを戻すように説得をし、警察署や児童相談所に連れて行かれてしまったという事例に幾度か接していますから、注意が必要です。
そのため、特にDVの事案は、弁護士に相談し、速やかな配偶者保護命令の申立てや公設のシェルターへの入所の検討をしておくことをお勧めします。
改正民法と別居時の子の連れ去りの関係
法務省の改正民法の解説では、DVなどの特別な事情がないにも関わらず、別居時に無断で子どもを連れて出てしまうと、父母相互の人格尊重・協力義務に違反し、違法と評価される可能性があると指摘されています。
また、別居時の態様によっては、(実務上は主たる監護者であれば、問題視されることは少ないですが)形式的には誘拐罪の構成要件に該当し得るとの指摘もあります。
この点、改正民法の施行前に作成された「子どもを連れた別居の解説記事」は多々ありますが、改正後の知識を前提にしたものではないもの、例えば、改正後の民法の条文、居所指定権、法務省答弁などに触れられていないものは、改正後の法制度では必ずしも同様には当てはまらない可能性があり、参考にすべきかについて注意が必要です。
過去には、「主たる監護者であれば、一切の協議なく置手紙を残して、ある日突然連れて出てもむしろ当然という風潮」があったのは事実ですが(そのような助言をしている弁護士も多くいました。)、共働きの夫婦が共同で育児を同程度で行うことが当たり前の時代となり、「主たる監護者」という言葉が相対的に曖昧になっている昨今、子どもを連れて別居をしたいと考えている方は、思わぬことで不利益を被らないように、弁護士と相談した上で、きちんとした準備をすることが必要といえます。
正しいアプローチをすれば、本来は親権や監護権を取得出来たにも関わらず、誤ったアプローチでそれらを失うことは避けなければなりません。
以 上
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