法的専門家の関与しない示談書の作成は有効か
弁護士からすれば,「そんなの当たり前でしょ。」となるのですが,法律相談では,かなりの回数「自分たちで作った書面でも法的な効力があるのか。」と聞かれることがあります。
この場合の「法的な効力」を「当事者の契約上の拘束力」とすれば,当事者のみで作成した文書でも,しっかり合意内容が読み取れる場合にはちゃんと法的な効力があります。
それどころか,日本は当事者の口頭の合意でも法的拘束力があります(立証できるか,真摯な合意であった等は別として)。
文書でももちろん法的拘束力があります。
しかし,給与等の差押えが可能となる「執行力」があるかと言われれば,NOです。
相手方が約束を破った場合に,相手の資産を差し押さえたいのであれば,強制執行受諾文言のある公正証書や,判決等の債務名義を取っておかなければなりません。
なので,法的拘束力のある示談書等を作成していても相手方が払わなければ(公正証書がある場合は別として),裁判等の手続きを別途行い,判決を取得しなければなりません。
一度ハンコを押すと取り返しがつかない
ところで,不倫においては当事者間ですでに示談書を取り交わしているケースが多くみられます。
専門家ではないといっても,成人である以上は,自らの行為に責任を持たなければならないという民法の建前上,示談書にハンコを押したらそれまでです。
泣いても笑ってもこれをひっくり返すのは,「原則的」に出来ません。この原則をひっくり返すには法律に定められた「例外事由」について,今度は自分が主張立証していなかければならないのです。
示談書を作成してしまった以上,任意に払わなくても裁判をされてしまうと負ける可能性が飛躍的に高くなります。
最初に弁護士に頼んでおけば数十万円で済んだはずの事件でも何百万円も取られてしまうケースが多々あります。
示談書の作成は慎重にしなければなりません。
請求する側も慎重に作成する必要あり
示談書が効力を有しないケースは大きく分けて,①公序良俗,②錯誤,③強迫,④詐欺などです。
事案に比してあまりに慰謝料が高額である場合,脅したり騙したりして作成された示談書は効力を有しません。
争う側も全力で争いますので,泥沼化することも多くあります。
このように口約束ではなく,ちゃんと文書において示談書を作成しても,裁判になれば相手方が争って来ることが多くありますので,示談書の文言や作成方法については,慎重を期さなければなりません。
特に不倫をされた男性の場合,怒りのあまり,相手を脅してしまうケースが多々ありますので,後で無効を主張されないよう注意が必要です。
したがって,示談書一つ作成するにもきちんとした段取りを踏むことが必要です。
まとめ
このように,示談書一つとっても色々と問題があります。どのような(に)示談書を作成すれば,相手方に争われずに済むか。
作成してしまった示談書の効力を争うにはどのようにしたらいいのか。
もし気になることがあれば当事務所へご相談ください。