弁護士コラム
養育費・婚姻費用の日弁連の新算定表は、離婚調停で通用するのか
目次
養育費・婚姻費用の新算定表とは
相模原の弁護士の多湖です。
養育費・婚姻費用の「新算定表」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
*このブログについてパート2がありますので、そちらも併せてご参照ください。
日本弁護士連合会の養育費新算定表が離婚調停で通用するか パート2
「旧算定表・現算定表」というのは皆さんが良くご存じのこれです。調停を起こしたことがあれば調停委員が、法律相談をしたことがある方であれば弁護士が参照しているところを見ている人も多いはずです。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf
そして、新算定表とは日本弁護士連合会が出しているこれのことです。
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2016/opinion_161115_3.pdf
新算定表の理念とは
新算定方式は、現在の裁判所で運用されている旧算定表が、「事案によっては養育費等が義務者の生活水準と比較して低く算定されて、別居世帯や一人親家庭の貧困の固定につながる一因となっている」「子供の養育家庭の実態に即していない。」と長年批判されてきたため、これを改善していくために提唱されました。
旧算定表との違いは、全体的に養育費の金額が高く設定されており、年齢区分がよりきめ細やかになっているところにあります。
このようなところからスタートしているので、権利者側にとっては新算定表を前提に養育費を決めた方が有利になることが多く、義務者側にとっては経済的負担が大きくなる場合が多い算定基準になっています。
離婚調停と新算定表による婚姻費用・養育費の算定状況
離婚調停の現場において、新算定表による婚姻費用・養育費の主張は考慮してもらえるのでしょうか。
答えから申し上げれば、今のところ裁判所は新算定表を全く相手にしないというのが現状です。
これは新算定表作成に関わった弁護士さん自らが認めていましたし、私自身幾度か同様の経験をしています。
調停委員はあくまで旧算定表にしたがって、その枠内で婚姻費用・養育費を協議しようとします。
新算定表の使いどころ
それでは新算定表というのは全く使えない基準なのでしょうか。
それはそうとも言えません。
義務者側として今後の生活のために、養育費を一円でも下げておきたいという場合も確かに多いです。
しかし、そうでない場合もたくさんあって、子供との関係も円満だし、お金を出来るだけ多く払ってあげたいが、際限なく支払えば自分の生活もままならないので、何か合理的な基準があればそれに従いたいという方もたくさんいらっしゃるのです。
新算定表は日弁連が研究に研究を重ねて作成したもので、一応の合理性のある基準です。
そのため、協議離婚の段階で、旧算定表と新算定表それぞれを加味しながら養育費を決めていくというのは十分に出来ますし、新算定表を基準に、実際に養育費を定めているご夫婦もちょくちょくお見掛けします。
したがって、もちろん義務者側の考えにもよりますが、場合によっては協議離婚において一つの基準となり得るものなのです。
今後「新算定表」の位置づけが社会においてどうなっていくのか、注視する必要がありそうです。
養育費や婚姻費用の審判まで行ったとしても必ずしも旧算定表通りにならないことがある
ところで、余談ですが、養育費や婚姻費用の調停においては、機械的に旧算定表の枠内での話し合いが多いですが、審判の段階まで言った場合、必ずしも算定表通りにならないことがあります。
権利者側に有利に算定表より多い金額が認定されることもありますし、義務者側に有利に低い金額が認定されることも少なくありません。
権利者側にも義務者側にも個別事情(稼働能力、病気の有無、配偶者の生活費部分に関しては有責性の大きさも考慮)がありますので、きっちり証拠に基づいて主張をすると、裁判所もそれぞれの個別事情をある程度汲んでくれることがあります。
その場合、計算式の基礎収入額や生活費指数で調整することが多いので、それぞれの要素に当てはめてしっかり主張しておくことが必要です。
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