
債務整理の巨人「アディーレ法律事務所」
相模原の弁護士の多湖です。
アディーレ法律事務所の業務停止は,かなり前から弁護士の間では噂されていました。
弁護士が消費者庁から「措置命令」を受けたわけですので・・。
*ちなみに措置命令はいきなり出るわけではなく,止めるよう指導が幾度か入るのが一般的です。
同期や後輩でアディーレに勤めている方も多く,数万人単位で依頼者さんを抱えているでしょうから,今後が非常に心配です。
当事務所や周辺の事務所へのアディーレ関係の問い合わせも増えています。
私も引継ぎ先があるのか確認しようと,先日東京弁護士会の相談窓口に電話を掛けましたが,全くつながりませんでした。
そこで,今日は依頼中に弁護士が業務停止になった場合にどうすればいいのか(債務整理を中心に)についてです。
弁護士の事件処理が終了しているか否か
過払請求にしろ,債務整理にしろ,事件処理の大部分が終了していて,後は和解済みの過払い金の振り込みだけであるとか,債務整理の分割金の送金代行だけという場合であれば,そんなに問題はありません。
債権者に連絡して過払金であれば振込先の変更を,送金代行については,自ら債権者に支払いを申し出ることになります。
*代理人を解任しないと応じられないという債権者はいるかもしれません。
自己破産の申立てについては,申立てが終了している場合で,同時廃止事案であれば裁判所に連絡して免責審尋期日に一人で出頭することは可能です。
申立終了後の管財事案である場合,債権者集会も不安かもしれませんが,とりあえず破産管財人と連絡を取って事情を説明して,相談してみましょう。
申立代理人の追加調査が必要な複雑案件でもない限りは,弁護士不在のお一人でも乗り切れるはずです。
現に私が破産管財人をつとめていた時も,申立代理人が出頭せず,破産者さんお一人で手続きを進めたことがあります。
個人再生については,個人再生委員がいる場合は再生委員に,いない場合は裁判所に相談してみましょう。再生計画案さえ既に出来ていれば,お一人でも乗り切れるはずです。
事件が途中である場合
問題なのは,事件が途中であり,今後も弁護士の助力が必要な場合です。
業務停止になった以上,一度契約は全て解除して預り金等も全て返金しなければならないため,結局考えられるのは他の弁護士に依頼することです。
① 依頼していた法律事務所が引継ぎ先を用意している場合
法律事務所が引継ぎ先を用意してくれていれば,多少は着手金等を安くしてくれたり,着手金なしで受任してもらえるでしょうからそこに頼むのが一番良いと思いますが,相談窓口に確認しようにも電話がつながらないのです・・。
所属弁護士が事件処理を引き継げるという話も聞きますが,
以下の基準があるので大丈夫なのでしょうか・・。
弁護士法人の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/rules/pdf/kaisoku/kisoku_houjin_goutei_kijun.pdf
(社員等の個人としての法律事件等の取扱)
業務停止に係る法律事務所を登録事務所とする社員等は、業務停止の前から自ら受任(法第三十条の六に基づく選任に係る受任を含まない )していた法律事件等の業務は行うことができる。
業務停止に係る法律事務所を登録事務所とする社員等は、弁護士法人が解除すべき、又は解除した法律事件等を、個人として引き継いで行うことはできない。 ただし、法第三十条の十九第二項に抵触しない場合であって,かつ依頼者が受任を求めるときはこの限りで ない。この場合において、当該社員等は、依頼者に対 して委任を求める働きかけをしてはならず、受任する場合には、依頼者から、業務停止にかかる説明を受けて委任した旨の書面を受領しなければならない。
② 全く違う弁護士に依頼する場合
サービスの一環として,着手金を通常より安くする事務所はあるかもしれませんが,一般的には,弁護士との契約を解除し(解任,辞任,合意解約),他の弁護士に依頼する場合,新しい事務所の報酬規定通り満額を支払わないとなりません。
ただ,かなり手続きが進んでいる場合であれば,大きな減額は受けられるかもしれません。そこは依頼したい法律事務所へ問い合わせをしてみてください。
弁護士費用は戻ってくるのか,新たに報酬を請求されるのか。
和解済みなど事件処理が終了している場合は,着手金は戻ってこず,新たに報酬金が発生する可能性があります。
これは,業務停止明けのアディーレ法律事務所のアナウンスを待つしかありません。
事件が中途である場合,依頼初期の段階であれば,着手金の大半は戻ってくるでしょうが,かなり進んでいれば戻ってくるものは少ないかもしれません。
この問題は個別の協議が必要です。
心配なのは資力の点ですが,こればかりは内部の方しか分かりません。
業務停止期間終了後に法人としての業務を全て止めてしまう(廃業)のであればともかく,業務停止明け後も弁護士業務を継続する判断をした場合であれば,心配ないように思います。
いずれにせよ業務停止の2か月の間は,各自が各自の判断で動くしかありません。
平成29年10月19日追記
アディーレがご案内の文書をウェブ上に公表しました。
東京弁護士会が許可したようです。