捜査機関から犯罪行為を行ったとして,捜査されている場合に,弁護人として速やかな捜査の打ち切り,身柄拘束からの解放,量刑を軽くするための示談等の活動,親族との連絡のやり取りを行います。
身柄拘束をされている場合には,直ちに勤務先への連絡,身柄開放への様々な手段(勾留をしないよう要望,勾留決定に対する準抗告)をしなければなりませんから,弁護人が必要不可欠です。
準抗告が通らない場合にも,不起訴の獲得,起訴後の保釈手続きと弁護人が行うべき業務は多々あります。
身柄拘束をされていない,いわゆる在宅事件においても,弁護人をつけると違法捜査の抑止になり,捜査の状況の説明や取り調べにどのように応じたら良いかのアドバイスを受けることが出来ます。
人から「疑われる」というのは想像以上に苦しいものです。
何を弁解しても信じてもらえない,そのような時に自らを守ってくれる弁護人の存在は精神的な支えになるはずです。
多くの方が刑事事件に関わるとしたら,親族や友人,知人が逮捕された時です。
明け方,チャイムがなると「警察の者です。」と警察手帳を見せられ,「○○について話が聞きたい。」と,手錠を掛けられ,警察署に連行されると共に,いわゆる家宅捜索(捜索差押)が行われます。
本来,人の移動の自由は日本国憲法が保障していますから,人を拘束することは違法であり犯罪です。
刑事訴訟法という法律に基づき,
国家が合法的に,個人の自由を制約し,身柄を拘束することを「逮捕」といいます。
逮捕には,①通常逮捕,②現行犯逮捕,③緊急逮捕があります。
通常逮捕は,犯罪を犯したと疑う相当の理由(証拠)+逃亡・証拠隠滅の疎俺があると,裁判所が発布する逮捕令状ととともに行われます。
次に現行犯逮捕は,犯行中や犯行直後に行なわれるもので,逮捕者が犯行を実際に目の前で見ているので,逮捕令状はなく逮捕をすることが出来ます。
そして,緊急逮捕は,ある一定の要件(死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁固に当たる罪とそれを犯したと足りる十分であること,逮捕状を求める時間的余裕がないこと)を満たした場合に,同じく逮捕令状なく逮捕をすることが出来ます。
逮捕をされた後,逮捕をされた者はどこに連れていかれるのでしょうか。
それは警察署です。
警察署で,担当の警察官から弁解録取(言い分を聞く取調べの手続き)がされ,嫌疑に対する本人の言い分が記録され,種々の取調べが始まります。
警察の取り調べを経験した多くの方がおっしゃるのは,「これまで警察は正義の味方だと思っていた。」「本当にやっていないのに何を言っても,嘘をつくなと何も信じてくれなかった。」「犯罪者を見る様な目で責められた。」ということです。
逮捕直後の取調べから,「逮捕をした人を有罪にするための取調べ」が始まっていると考えた方がいいです。
よくドラマのヒーローのように,正義感に溢れる検事さんが,捜査をし直して無実の罪を暴いてくれるというようなことを想像してしまいますが,事実は全く異なります。
この時から,逮捕をした相手を有罪にするための手続きと,
それに対抗するための刑事弁護は始まっています。
本来は自由であるはずの人を逮捕するわけですから,
逮捕というのは無制限に出来ません。
逮捕後48時間以内に,警察は検察に事件の送致(事件の処分のために捜査結果を引き継ぐ)しなければなりません。
但し,実務上は,逮捕後24時間程度で送致することも多いです。
検察官は,事件の捜査をして,勾留請求するかどうかを判断します。
勾留請求は,①罪を犯したと疑う相当の理由,②住所不定,証拠隠滅の恐れ,逃亡の恐れのいずれかを満たした場合に認められます。
勾留請求の判断は,裁判所の裁判官が行ないます。
一度勾留請求が通ると,まず10日間勾留され,場合によっては,さらに10日間延長されることになります(合計20日間)。
警察に逮捕されてしまった場合,外に出れるタイミングは決まっています。
まず,逮捕された後,検察官が勾留請求をするタイミングです。
安定した仕事に就いていたり,身元引受人がいる場合,重大事件でない場合は,検察官が勾留請求をしないという判断をすることもあります。
また,検察官が勾留請求をした場合も,弁護人が裁判官と面談をする等した結果,
裁判官が,検察官の勾留請求を認めず,却下することがあります。
そのため,勾留請求をしない,あるいは勾留請求を却下する判断が出た場合には,
外に出ることが出来ます。
次に,勾留請求が認められてしまった場合の不服の申立てです(準抗告)。
裁判所が勾留請求を求めた場合に,勾留請求の判断を争うことが出来ます。
弁護人を選任して準抗告の申立てをするのが通例ですが,
この準抗告が認められた場合,勾留請求は効力を失いますので,
やはり外に出ることが出来ます。
ご家族に迎えに来ていただくことが多いですね。
そして,一度目の勾留請求に対する不服の申立てが認められず,勾留が始まってしまった場合,検察官が勾留請求の延長の申請をするタイミング(10日後の時点)で裁判所が勾留請求の延長を認めると,その延長決定に対してやはり不服の申立てをすることが出来ます(延長決定に対する準抗告)。
10日あるいは20日間の勾留が終わると,検察官が起訴(裁判を起こすか)をするか,不起訴(裁判を起こさないか)にするか判断を決めます。
不起訴にされた場合は,自由になることが出来ます。
そして,起訴された場合は,保釈金を支払うことで保釈請求が認められれば,
やはりいったん自由になることができます。
保釈が認められず,裁判が進んでも,執行猶予判決等を得れば,
やはり外に出ることが出来ます。
裁判の期間は裁判員裁判を除く一般的な事件では2~3か月間です。
以上が,警察に逮捕された場合に,外に出られるタイミングとなります。
検察官が裁判所に起訴をすると,一定期間経過後に弁護人が刑事記録の閲覧をすることが出来るようになります。
弁護人は開示された刑事記録をもとに,無罪を主張したり,あるいは情状酌量を求めるための種々の弁護活動を行います。
刑事裁判には,略式手続きと呼ばれる裁判と,通常裁判と呼ばれる裁判があり,
通常裁判には,一定の重大な犯罪事件を取り扱う裁判員裁判が含まれています。
一般的な通常裁判(覚せい剤や傷害,窃盗事件等)であれば,起訴から2~3か月で判決まで行くのが一般的です。
しかし,裁判員裁判(殺人や強盗致死傷,現住建造物等放火など)は重大事件を取り扱う関係で,証拠も膨大であり,起訴から判決まで1年以上かかることは珍しくありません。
そして,刑事裁判の結論は,以下の四つがあります。
略式罰金 簡易裁判所の管轄に属する事件で100万円以下の罰金や科料
執行猶予判決 懲役や禁錮刑に執行猶予(執行猶予期間の間,犯罪を犯さなければ懲役を免除される)がつく判決
実刑判決 懲役や禁錮で刑務所に入る判決
無罪判決 被告人を無罪にする判決
刑事事件において,示談や被害弁償というのは非常に重要です。
検察官も裁判官もこの点は明言しています。
被害者の方がいる犯罪の場合,起訴するかどうかの判断,
起訴された後の量刑の判断では,「被害法益の回復の程度」というのが
非常に重視されます。
どのくらい重視されるかというと,
検察官から見た示談や被害弁償ですが,起訴するかどうかに大きな影響を与え,示談が成立すると,特に前科前歴がない場合など,不起訴の可能性が非常に高くなります。
示談や被害弁償がなければ,起訴されている事案でもこれらが成立すると,
不起訴になる事案もかなり多いです。
次に,裁判官から見た示談や被害弁償ですが,
やはり,判決の量刑に大きく影響を与えます。
詐欺や横領等の経済的犯罪は特にですが,示談や被害弁償があれば,
本来,実刑に処せられるものについて,執行猶予判決を受けることが可能になったりします。
検察官も裁判官も,犯罪による被害法益が事後的にでも回復したかどうかというのは非常に重視しているのです。
刑事弁護は時間との戦いです。
無実の罪でも,検察官の取調べで罪を認めてしまった場合,
裁判で争うことは非常に難しくなります。
そのため,警察の取り調べを受けたり,逮捕されてしまった場合は,
速やかに弁護人を選任する必要があります。
また,罪を認めている場合でも,示談等を行う場合には,やはり犯罪行為から時間を置かずに行う必要があります。
それによってその後の処分も大きく変わってくるのです。
そのため,刑事弁護を弁護士に依頼するのもスピードが重要になってきます。
他の民事事件等と比べて,時間的余裕はほとんどありません。
まずは弁護士に相談する必要があります。
警察は,犯罪行為がなければ動きません。
そのため,多くの方は,「自分が悪いことをしていなければ,警察なんて関係がないでしょ。」といいます。
しかし,本当にそうなのでしょうか?
当事務所が過去に取り扱ったことのある事件でも,本当にやっていないのに逮捕されたという事案はままあります。
悪いことをしていなくても,悪いことをしたと疑われるからこそ,
「李下に冠を正さず。」という言葉があるのであって,本当にやっていなくても
やったと疑われることは実際にあるのです。
刑事弁護に関してしっかりと知っておかなければ,どれだけ真面目に生活を送ってきた方でも,「しっかりと真実を話せば分かってもらえると。」真面目に生活を送って来たからこそ,
気付いたら取り調べで犯罪者にされてしまうということがあり得るのです。
自分の身を守る為にも,刑事事件を他人事とは思わずに,
刑事裁判というものについても,しっかりとした知識を付けておく必要があります。